酵母とは
日本酒の発酵において、酵母はアルコールと香り成分を生み出す最も重要な微生物です。糖分をアルコールと二酸化炭素に分解する働きだけでなく、使用する酵母の種類によって吟醸香や酸度、味わいのキャラクターが大きく変わります。
協会酵母
公益財団法人日本醸造協会が頒布する酵母を「協会酵母」と呼びます。番号で管理されており、現在も多くの蔵元で使用されています。
主な協会酵母の特徴
- 7号(真澄酵母):長野県の酒蔵「真澄」から分離。穏やかでバランスのよい香り。全国的に最も広く使われる定番酵母。
- 9号(熊本酵母):熊本県酒研究所から。華やかでフルーティーな吟醸香を生む。吟醸酒に多く使用される人気酵母。
- 10号:高酸性酵母。酸味のある力強い酒質を生む。
- 14号(金沢酵母):石川県の酵母。きれいで優雅な吟醸香。北陸の酒に多い。
- 1801号(協会18号とも):カプロン酸エチルを多く生成し、りんごのような甘い香りが強い。人気の高い吟醸系酵母。
県酵母・蔵付き酵母
各都道府県の醸造試験場が独自に培養・頒布する酵母を「県酵母」と呼びます。地域の気候や酒質の方向性に合わせて開発されており、その県らしい酒を造る上で重要な役割を果たしています。
また、蔵の設備や空気中に古くから棲みついた「蔵付き酵母」を使う蔵元もあり、そこでしか生まれない独自の個性につながります。
花酵母
東京農業大学が開発した、花から分離した酵母。ナデシコ・撫子・マリーゴールドなどの花を起源とし、品種によって異なる香りのプロファイルを持ちます。フルーティーで個性豊かな酒が生まれやすく、消費者への訴求力も高いとされています。
酵母と香りの関係
吟醸香の主成分は「酢酸イソアミル(バナナ様の香り)」と「カプロン酸エチル(りんご様の香り)」です。酵母の種類によってこれらの成分の生成量が異なるため、同じ原料・同じ精米歩合でも、使用酵母が違うだけで全く異なる香りの酒になります。
ラベルに酵母の種類が記載されている場合は、それを手がかりに香りのイメージを持ってから飲んでみると、テイスティングがより楽しくなるでしょう。