生酛・山廃とは?伝統製法の魅力

速醸系との違いから生酛・山廃の製法と複雑な味わいの理由、燗酒との相性まで解説。
AD 300×250

酒母(もと)とは

日本酒の醸造では、まず「酒母(もと)」と呼ばれる酵母を大量に培養した液体を作ります。健全な酵母を守るため、雑菌の繁殖を防ぐ乳酸が必要です。この乳酸をどのように供給するかによって、「速醸系」と「伝統系(生酛系)」に大きく分かれます。

速醸系

現在最も広く使われている製法で、醸造用乳酸を外部から直接添加します。短期間(約2週間)で安定した酒母ができるため、品質管理がしやすく多くの蔵元が採用しています。クリアでクセの少ない味わいが得やすい反面、個性がやや画一的になることもあります。

生酛(きもと)

江戸時代から続く最も古い伝統的製法。自然界の乳酸菌を取り込み、酒母の中で自然に乳酸を生成させます。製造過程で「山卸し(もとすり)」と呼ばれる、酒母を棒で丹念に磨り潰す重労働が特徴で、均一に乳酸菌が繁殖するよう促します。

生酛では多様な微生物が関与するため、複雑な旨みとコク、引き締まった酸が生まれます。製造期間は速醸の約2倍かかり、手間とコストがかかりますが、その分独特の深みが生まれます。

菩提酛(ぼだいもと)

奈良県の正暦寺に起源を持つ、さらに古い製法。生酛よりも前から存在し、酸味が非常に高く個性的な味わいが特徴です。

山廃(やまはい)

生酛から「山卸し」の工程を廃止(山卸し廃止=「山廃」)した製法で、明治時代に開発されました。山卸しの代わりに温度管理などで乳酸発酵を促進させます。生酛と速醸の中間的な手間感ながら、生酛に近い複雑な味わいが得られるとして多くの蔵元に普及しました。

なぜ複雑な味わいになるのか

生酛・山廃では、乳酸以外にも様々なアミノ酸・有機酸が自然に生成されます。これらが酒に深いコクと旨み、力強い酸を与えます。速醸系に比べてアミノ酸度が高い傾向があり、「味に幅がある」「燗にしたとき真価を発揮する」と言われます。

燗酒との相性

生酛・山廃は燗酒に向く代表格です。温めることでコクと旨みが増し、酸が丸くなって飲みやすくなります。45〜55℃の上燗・熱燗で飲むと、その魅力を最大限に感じられます。食事(特に発酵食品・こってり系料理)との組み合わせも抜群です。

AD 300×250